茶道具の扱い方について入門編

 初めてお茶をなされる方、あるいはお道具を持たれようとする方には、「扱い方がよくわからなくて怖い」という方もいらっしゃると思います。
 ここではそんな方に向けて、最初に知っておきたいことを簡単ではありますがレクチャーさせていただきたいと思います。まず、お茶道具の種別にかかわらず覚えておきたいことを上げます。

1.できるだけ指輪、腕時計の類は外しましょう。キズの原因となることがあります。
2.ハンドクリームなどの過度な使用は避けましょう。シミ、汚れなどの原因となります。

それではそれぞれのお道具について簡単ではありますが見ていきたいと思います。

お茶碗、水指、茶入などの焼き物 棗、お椀などの漆器 釜及び風炉 竹製品 掛け軸 帛紗、古帛紗、出帛紗など

御茶椀、水指、茶入などの焼き物

 御茶椀は使う前に一度水につけておきましょう。先に水分を含ませることによって、立てた抹茶がしみこむのを防ぐことができます。ただし、楽茶碗は一般にもろいので水に漬けこみすぎないようにしましょう。焼き物の建水も同様に考えます。

 楽茶碗や仁清写など絵のついたお茶碗は衝撃にも大変弱いので、お点前の際には茶杓を強く当てないようにしましょう。先に述べた指輪などで作る傷もよくあります。また、お使いの後もほかの食器などと一緒に洗うのは避けたほうが無難です。その際、洗剤は使わないようにします。

 お茶をたてない分、水指などは汚れにくいかと思いますが、大きく重いものもありますので扱いは慎重に…。
 茶入はお使いになった後はよく抹茶を抜きます。筆などを使い、中をふき取ってもいいでしょう。水洗いは原則として行いません。

棗、お椀などの漆器

 漆器は非常に擦り傷が付きやすいものです。タオルなど、毛羽立ったものでのお手入れは避けましょう。漆器のお手入れ専用の物があるとベストです。棗などの場合は耐水性はまあまあありますが、水につけるのはやめたほうがよいでしょう。濡れ手ぬぐい程度で十分です。

 お椀など食器類は水洗いできますが、これもなるべく一つ一つ洗ったほうが間違いはありません。また、洗剤の使用は避けましょう。乾燥の際は直射日光は避けてください。強い紫外線は漆の天敵となります。お使いの際にはあまり熱いものを突然入れると色焼けの原因となることがあります。お椀をしっかりと温めてから入れてください。

 なお、漆器は場合によっては購入直後、独特の漆のにおいがする場合があります。風通しの良い、日光の当たらない場所で1~2週間おいていただければ匂いは消えます。

 釜は鉄製であり、錆びるのは当然のことです。最近は防錆もしくはステンレスなど錆びない金属が一般的になったことで、少々の錆で驚かれる方がいらっしゃいますが、害はありません。安心してお使いください。ただし、沸かしたお湯に味、色、においが付くほど錆びてしまうとよくありません。そうなった場合には修理にお出しください。

 また、しばらく使わなかった釜は使いだしにこういった症状が出ることがあります。その場合、水からお湯を沸かし、沸いたら捨てるということを何度か繰り返してみてください。2度目以降は釜が温まっているので、水ではなくお湯にします。本当に痛んでいる釜でなければそれで症状が落ち着きます。

 扱いの際にはできるだけ表面は素手では触らないようにするとよいでしょう。また、水道水をそのまま使うより井戸水を使う、もしくは水道水を使う場合でもカルキ抜きをしたり、一度沸騰させて使うと良いでしょう。ガスの仕様は厳禁です。炭のほか、電熱器、対応していれば電子調理器、IHなどをお使いください。

 使用後は釜がまだ熱いうちにお湯を捨て、釜自身の余熱で乾かします。この時ふたを閉めないようにします。蓋をしてしまうと中で結露して錆の原因となります。空焚きは釜を痛める原因となりますのでやめたほうが無難です。保管の際には湿気を避けましょう。

 風炉は使わない時期は灰を抜いておきます。とくに唐銅などの金属製の場合は痛みの原因となります。水拭きなどをしても良いですが、水分はしっかりと拭っておきます。唐銅は意外と表面に擦り傷ができますので、これもタオルなどは避けたほうが無難です。

竹製品

 竹製品は非常に乾燥に弱く、とくに冬場はご注意ください。締め切って暖房をつけたマンションなど、乾燥の強いところでは最悪真っ二つに割れます。逆に夏場あまりにも湿度が高いとかびの原因となります。どちらも極端な状態はお避け下さい。

掛け軸

 軸に沁みが浮くときの大きな要因はやはり湿気です。しまうときには雨の日は避けたほうがいいでしょう。また、長期間しまいっぱなしにしておくのもよくない場合が多いです。風通しの意味もかねて、年に1度はかけてやるといいと思います。しまう際にはきつく巻きすぎず、しかしゆるすぎず、適度に巻き上げるようにしましょう。どちらも極端にすると折れの原因となります。

帛紗、古帛紗、出帛紗など

 これらは基本的に正絹ですので洗濯、クリーニングはできません。汚れた帛紗はご新調ください。また、変に折れが付くと使いにくくなりますので、おしまいの際には正しいおり方で変に折れ曲がったりしないようにご注意ください。